朝の5時、目覚めた私は、耳に違和感を覚え耳を触った。イヤホンをしたまま眠っていたことに気づいた。そして、左耳のイヤホンだけ耳にささっていない。やっべ～と思った。
イヤホンをしたまま眠るなんて初めての経験で、しかもワイヤレスイヤホンを失くすのも初めてだったし、「やっべ～どこだよ」よりも「布団洗濯する時にそのまま洗濯されたら終わりじゃ～ん」とか「折りたたみベッドたたむ時に轢いたら終わりじゃ～ん」と、「見つからなかった場合」のことだけ考えていた。
私はここ数年夢を見ない日はないほど眠りが浅いのだが、前の日は残業で身体が疲れ切っており、なかなか変な夢をみていたおかげで目を覚ますことができた。(ちなみに、阿部寛さんやウッディーのものまねをしているあの芸人さんが会社の宴会で脳ミソの玩具を売るという夢だった。多分ブリキ製)
自ら発行してくれるタイプのイヤホンだったため、冬場特有の朝方の暗さを逆手にとって、イヤホンの光を探してイヤホンを見つけ出そうと思った。布団をめくるのが疲れたのでこの方法はすぐ諦めた。
次は、Bluetoothで繋がっているイヤホンに対して、スマホのコントローラーから音量を最大にして音楽を流す作戦に移行した。
選んだ音楽はこちら。
――キリンジ 『君の胸に抱かれたい』 なるべく暗闇の中から聞こえても怖くならない音楽をセレクトしたかったので、プレイリスト上位にこの歌があって助かった。
いよいよ、歌を流す。暗闇の中から堀込さんのやわらかい歌声が聴こえてくるが、わからない。昔、Wiiパーティというゲームで、1人のプレーヤーが音の鳴るリモコンを隠し、もう1人のプレーヤーが隠されたリモコンを探すというゲームがあったなあとふと思い出す。そうか、私と同世代の人は「失くしたイヤホンを探す能力と根性」に近しいものが、あの頃から鍛えられていたんだなと感じる。
しかし、鍛え上げられていた私でさえも、意外とイヤホンがどこにあるかわからない。どこだよ、どこなんだよ堀込兄弟。
やはり暗闇は怖いもので、いくら歌声がやさしくても、暗闇からささやかに音楽が聞こえるというのは怖いものたった。『君の胸に抱かれたい』MVの首の繋がった堀込兄弟が頭に浮かぶ。あれ初見の時ちょっと怖かったんですよね。口だけ動いているあれです、でもあのMV不思議な感じがしていいですよね。しかし今は暗いので怖い。いちはやく安心出来る布団に寝転びたかった。まだ水曜日、ゆっくりしていられない。
やれやれ、としゃがむ。すると、硬い地面に固いものが転がる音がした。おっこれは…、と感じ手探り「それ」を掴むと、それは探していたイヤホンだった。うれしい。ありがとうキリンジ。
もう一度布団で寝る。6時半まであと1時間、あと少しだけ、ほんの少しだけ眠る。
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